旅のしおり
プロフィール

Author:シュンちゃん
還暦を過ぎました。思えば遠くへ来たもんだ。人の命はいつか必ず果てる。生きる軸足である山のほか、本にしおり挟むよに、趣くまま時折生きし証ここにつづる。齢ゆく者のボケ防止備忘録ブログです。適当におつきあいください。
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読了 「逝きし世の面影」 -20180614(木)

逝きし世の面影 -20180614(木)

渡辺京二 「逝きし世の面影」 読了。

幕末から明治にかけて日本を訪れた外国人たちが見た、感じた、
当時の日本が浮き彫りにされている。
いわば民俗学的歴史書であり、時代小説好きなわたしとしては興味深く拝読。

以下のテーマに沿って書かれているので分かり易い、そして、ダークサイドあること否めないものの、
日本人がこんなにも、陽気で人懐こく人目をはばからないオープンな民族であった事に驚きました。

第一章  ある文明の幻影
第二章  陽気な人びと
第三章  簡素とゆたかさ
第四章  親和と礼節
第五章  雑多と充溢
第六章  労働と身体
第七章  自由と身分
第八章  裸体と性
第九章  女の位相
第十章  子どもの楽園
第十一章  風景とコスモス
第十二章  生類とコスモス
第十三章  信仰と祭
第十四章  心の垣根  

もう一つ心に残ったのは、
ペリー来航から西洋人、日本の知識階級が目指したもの、
明治以降の日本の近代化は、江戸文明の流れを受けて作られたものではない、という点、
江戸文明滅亡させての日本の近代化は、果たして日本人に良かったのか?  

久しぶりに骨太で読み応えのあるすばらしい本に出会いました、
こういう本にはなかなか出会えない。 宝物な一冊ができました。
そして私、江戸情緒華やかなる、18世紀半ばから後半に生まれたかった、そうも思いました。

逝きし世の面影2 -20180614  逝きし世の面影3 -20180614

逝きし世の面影4 -20180614  逝きし世の面影5 -20180614

逝きし世の面影6 -20180614  逝きし世の面影7 -20180614

逝きし世の面影8 -20180614  逝きし世の面影11 -20180614

逝きし世の面影9 -20180614 逝きし世の面影10 -20180614 逝きし世の面影12 -20180614

逝きし世の面影13 -20180614  逝きし世の面影14 -20180614

逝きし世の面影15 -20180614

読了 「哀愁の町に霧が降るのだ」 -20180525(金)

哀愁の町に霧が降るのだ -20180525(金)

椎名誠 「哀愁の町に霧が降るのだ」 読了。

舞台は、家賃はべらぼうに安いが一日陽のあたらない江戸川区小岩克美荘、
シーナ(敬愛の意を込め)若き日の共同生活ドタバタ模様。

あとがきで本人が 「この本で書きたかったのは、ぼくのまわりにあやしく徘徊する、さまざま雑多で魅力的な人間たちのことでした。 ぼくはあやしい人生とあやしい人間たちというのがとにかく世界で一番好きなのです。」 と云っている。 また、小説なら話は別だけれど、お前の書いているのはスーパーエッセイというか異常なシロモノなんだから本当のことを書いた方がいいよ、というようなことを、高校時代以降ずっとつきあうことになる友人沢野ひとし氏が云っている。 そのあやしい、同居人周囲にいる人人を、シーナは読む者に分かり易く話し聞かせるように描き出してる、というのがすばらしい、そう思いました。

椎名誠の人生時系列としてはこのあと 「新橋烏森口青春篇」 「銀座のカラス」につづきます。

氏は生業である執筆活動のほかに生きる心のベースとして、
海川に海外と、自由気ままその野外活動ワールドワイドなのですが、
わたしの知ってる世界ではこんなようなことやってた人です



話しまったくとんじゃいますが、
幼なじみのヒロユキくん、若い頃一時期小岩にほど近い平井に住んでました、
おっとー!ソレモ同じ、窓開けたらすぐ横の建物の壁じゃな~いな一日陽の当たらない部屋に。
学生だったわたしを残し、朝ちゃんっと!仕事に出て行った彼の後ろ姿を見て、
サラリーマンって、社会人って スゴイナー って思ったこと、思い出しました。

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 上巻
 1. 話はなかなか始まらない
 2. まだ話は始まらない
 3. 緊急対策中途解説の項
 4. 吹きだまり高校の寒い春
 5. 血とバラと必殺技の日々
 6. ごったがえしのビートルズ
 7. 六本木で夜だった
 8. 女たちの夏
 9. なかがき
10. おれたちに夜明けはない
11. 原始共産生活の発生とその背景
12. サバナベの夜は更けて
13. ひらひら仮面あらわる
14. シルクロードの夜は更けない
15. 北京裏街突撃肉饅頭

 下巻
16. 反撃のアリューシャンキック
17. ハラハラと花が散ります春四月
18. 雨
19. ドジたちのバトルロイヤル
20. ズタブクロ血笑録
21. 言いわけの多い幕開け
22. 平和で裕福な秋の休日
23. ブンガク的フトンブクロ
24. コタツ祝い
25. さらばとうちゃん
26. 西新宿メモリーナイト
27. 乾杯
28. 中小企業のあやしい人々
29. 負け勝負
30. サヨナラ

読了 「わしらは怪しい探検隊」 -20180512(土)

わしらは怪しい探検隊 -20180512(土)

椎名誠 「わしらは怪しい探検隊」 読了。

椎名誠とその一味 「東日本何でもケトばす会」 通称 「東ケト会」の青春グラフィティであり、
このあと続くことになる 「あやしい探検隊」 シリーズの記念すべき第一作がこれ。
離れ島での〝テントキャンプ自炊暮らし遊び″がつづられている、
話しの中心は昭和49年、神島(三重県)にでかけた時のこと。 
一味の素なる様子がシーナ語録で埋め尽くされている。 いいじゃない!

わしらは、、、2 -20180512
わしらは、、、3 -20180512わしらは、、、4 -20180512
挿し絵は、高校時代の同級生でメンバー、手足の妙に長い沢野ひとし、
隊において最も重要なポスト、炊事班長だった沢野氏は、
①カレー ②けんちん汁 ③ブタ汁、この三つしか基本作らなかった、
運よく海のものが採れれば何でも投下は、もちのろ~ん!!!ですが。

椎名語録お気に入り沢山あるのですが、そして、
本書を読まなければ微妙なニュアンス伝わりませんが少し紹介。

〇 離れ島では「エルメスのバッグやジバンシイのスカーフの威光などまったく通用しないし、それよりもはるかに貴重なものが布バケツ一杯の真水であったりするのだ」

〇 「おれたちは愛を確認することよりも満腹を確認することの方により多くエネルギーを費やす、という人生をすごしてきてしまった人々なのである」

〇 「新宿東口の駅前にある、オババばかりが五人、白い割烹着をきて、なぜかいつも悲しそうな顔をしておでんを煮ている店が、おれと炊事班長のよく行く店だった」

〇 そして、解説をメンバーである 「釜たきメグロ」(目黒孝二)氏が書いているがそこにこうあります。
「夜は毎晩大宴会で、しかも隊員たちはかなりしつこく飲む。めしは宴会の始まる前にすでに作られ、浜辺の宴会場から少し離れたところに置かれてある。一度近くに置いたら、酔っぱらった奴が蹴つまずき、砂を大量にぶち込んでジャリジャリの飯を喰うはめになり、以後宴会場から距離をおいて隔離するようになったのである。したがって宴会場からそのまま席を立ち、釜にストレートに近づくのはかなり勇気がいる。 『女みたいな奴だな、ケッ』 という陰気な小安のまなざしと、『こらッ』 という椎名隊長の叱責を覚悟しなければならない。ではどうするか、というと、死んだふりをするのである。 『酔った酔った、もうダメだあ』 と小便をしに行くふりをして立ち上がる。あるいは目のまわったふりをして、ぐたっと横になっちまう。そしてしばらくしてからフラフラと立ち上がる。すると 『あいつ、もう酔っちまったのか、可愛い奴だ』 と、粗暴だが善良な隊長はコロッとだまされてしまう。」 と。 
バンカラやんちゃ恐さ頭の固さ先立つものの、真っ直ぐでどこか憎めなくハートがある、私の先輩にもいたそんな当時のリーダー格の人柄の一面を現しているように思います。

心が若返る、痛快で考えることのない、とても楽しい一冊でした、
そして私自身も、昔一緒にバカやってたヤツほど、今なつかしい。


読了 「ハーケンと夏みかん」 -20180508(火)

ハーケンと夏ミカン -20180507

椎名誠「ハーケンと夏みかん」読了。
氏がヤマケイ(山と渓谷)に連載した第一回が表題のこれ。 
ほか、実体験からのものや野外活動での思い出思いなど十の話しが収められている。

「雪山ドタバタ天幕団」 にある「山道は秋のおわりというよりも、完全に冬のはじめになっていた。 おそろしいほどに紅葉し、しんとしずまりかえった山道をただもうひたすらあるいていく、というのはなかなかいい気分だった」 の 「、というのは、、、」 などと云うのは実に椎名誠らしい表現だとうれしくなりました。

私は外国には片手で余る回数しか出かけたことがありません。 山と云ってもヒマラヤエベレスト街道(標高4000m少し上)までしか歩いたことがありませんし、釣りもしない。 ですが氏の心意気に、バンカラが通る時代の端くれ。 共感できる部分が多くありほほえましく読みました。 まー簡単に言うと、いつまでも子供みたいな世界なわけです(笑) なかなか良かったです。

椎名誠はさまざまな分野の作品を書いていますが、
私は彼のこういったはちゃめちゃ的青春ストーリーが好み、 
自分がもうはちゃめちゃできない歳になったからかもしれません。

読了 「深川安楽亭」 -20180427(金)

深川安楽亭 -2018.4.27(金)

山本周五郎 「深川安楽亭」 読了。 表題含め十二の話しからなる。
発表されたのが、戦前の昭和15年から東京五輪も終わり三年昭和42年迄と、巾が大きい。
周五郎特有のどっぷり重い人情もの、と云うより総じてさらりと読めるのが特徴、
藤沢周平的、静かな中に周五郎としては情景描写が多い一冊でした。


◇以下、あらすじに感想など個人的備忘録
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〇内蔵允留守 「キング」昭和15年11月号。
剣の道、百姓の道、どのような道を究めるにも、ただ人から教えられたいと思う様では、真の道は会得できない。

〇蜜柑  「キング」昭和16年9月号。
真のご奉公を知らぬと云われた武士が、退身を願い出るが、奥庭詰め(蜜柑づくり)に回された。 そこで得たものとは? そして大役を仰せつかることになる。 紀州有田の話し。

〇おかよ  「講談雑誌」昭和17年5月号。
うだつの上がらない足軽男が島原へ出陣する際、茶屋の娘おかよから鎌倉八幡宮のお札をもらう。 戦で重傷を負うが功績をあげ二百石の士分に取りたてられる。 そのお札が実は、おかよが自分のほぞの緒を包んでくれたものであった。 話しの最後、年嵩の行く女と若い女が茶店でその話しをしている。 その情景もなかなか良い。

〇水の下の石  「新武道」昭和19年5月号。
大きな石に抱きついたまま水底で死んでいった小弥太。 彼のおかげで戦は勝った。 離せば助かるものをと笑う者もあったが、個人の手柄功名ではなく生死を超越した愛国心が描かれている。 時は正に戦火激しい頃。 美しくも悲しい時世。

〇上野介正信  「小説新潮」昭和23年6月号。
謀反を起こしてでも、からお預けの身となり最後は自害した、佐倉城主上野介正信の悲劇的な生涯。

〇真説吝嗇記  「新読物」昭和23年6月号。
質素倹約を両袖に通し生きる男の所にそれを上回る女が嫁入った。 こっけいもの。 最後の展開も良かった。

〇百足ちがい  「キング」昭和25年8月号。
「參つなぎ」、、、三日三十日三月三年とことを先伸ばすことが美だと云うことを人生哲学と教え込まれ生きる男は、出世もしなければ周囲から一足ちがいならぬ百足ちがいと軽んじられながら生きていたのだが、ひょんなことから大出世。 參つなぎのおかげで女難からも逃れることができた。 処世術示唆しているこっけいもの。

〇四人囃し  「キング」昭和27年6月号。
反抗的で世間からはみ出し生きる男と女。 似た者同士、生きる事においては負の世界。 世間は彼らを反社会的分子と排斥しようとするが、そこには弱いものにはめっぽうやさしい反逆的正義感も漂う。 屏風の端から見せる着物の裾先ちらり、なども心にくーい。

〇深川安楽亭  「小説新潮」昭和32年1月号。 
表題作品。 抜け荷の巣深川安楽亭。治外法権的安楽亭、世間どころか仲間も信じない命知らずな者たち。 が、命がけで助けてやろうとする、守ろうとする姿もある。 「砦山の十七日」や「暴風雨の中」同様一場面もの。

〇あすなろう  「小説新潮」昭和35年8,9月号。
ヒノキに似てるが、檜じゃないあすなろう。 それを、人、人の生き様、人の行く末に投影してみせた物語。

〇十八条乙  「オール讀物」昭和37年10月号。
人助けするが、ご定法により報われない男とその妻女の話し。 法の拘束と夫婦愛の深さを描いている。

〇枡落し  「小説新潮」昭和42年3月号。
咎人の妻とその娘、二人で死のうかと思ったこともあったが、周囲の助けもあり細々と生きている。夫は無実だと近寄ってくる男がいれば、その真実を探ってくれる男がいたり。 人生はどこかに落とし穴がある。 これは前年12月に書かれ雑誌の発売は1/22、周五郎は発表された直後2/14に亡くなっている。 大きなインパクトはないが静かに人生というものを語っているように思いました。

「藤沢周平 — 負を生きる物語」 -20180415(日)
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読了 「又蔵の火」 -20180414(土)

又蔵の火 -20180414(土)

藤沢周平 「又蔵の火」 読了。 久しぶりに藤沢周平。
昭和47,8年初出の五本が収められている。
直木賞受賞作 「暗殺の年輪」 が48年3月初出なのでその前後に書かれた氏の初期もの。

あとがきで藤沢周平自身が 「読む人に勇気や生きる知恵をあたえたり、快活で明るい世界をひらいてみせる小説が正のロマンだとすれば、ここに集めた小説は負のロマンというしかない」 と述べている。 その通りでどれも暗い。 そして氏は 「これは私の中に、書くことでしか表現できない暗い情念があって、、、その暗い情念が生み落としたものだからであろう」 とも書いている。

このあと、昭和51年の 「竹光始末」 「用心棒日月抄」 の頃から、細やかで美しい情景描写、プラス、用心棒、、、にあってはユーモア感覚も開花したように思います。 地位の高き者より下級武士、裕福な者より貧しい人人を描くというベースは変わらないもの、そんな静かで美しく時にユーモラス、そして品の良いのが「藤沢ワールド」なので、この一冊逆に価値があるのかな、とも思いました。

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以下、内容など少し

・又蔵の火
兄の敵討ちと、血はつながらないが、甥と刃を交える年下の叔父。なぜそこまでしなければいけないのかよくわからない作品でしたが、鶴岡市の総穏寺に像があるという、実話に基づいてる歴史小説。 藤沢作品の中でも取分けすばらしいとの評論家高橋敏夫氏らの評価があるが私にはにわるさん、割り切れないストンと落ちない、、、そのすばらしさがわからなかった。 再読してみようか。

ほかの四作品は博徒やヤクザもんの話し。 フィクションなのでどの作品も話しとしてはまとまっている。
周りから一時煙たがられた者は、何処まで行っても裏街道を歩かなければいけないのか。。。

・帰郷
若い頃町を出た渡世人が、老いて帰ってきた
昔の女を探すが、娘と出会ってしまう。最初娘とは知らずに。

・賽子無宿
指を詰められ追われて出て二年後、江戸に舞い戻った男
入った飲み屋で熱っけで倒れ女に介抱される
その女のためにひと肌脱ごうとする男。再び博打に手を染める。 が、、、

・割れた月
島帰りの男が、成り行きで昔の知り合いの家族養いながら、
堅気になろうとするのだが、世の中ってヤツはそう思う様にことは運ばない
昔取った杵柄にも良し悪しあり。

・恐喝
賭場で目に恵まれず歩いると飛んできた板が脚に当たりケガをした男の恐喝から話しは始まり、
あれこれ物語展開。 最後、最初に脅したお店の娘を命を賭して助けるという話し
気が合う姉ちゃん(二つ年上の従妹)との話しも、いい。


読了 「吉原御免状」 -20180408(日)

吉原御免状 -20180408(日)

隆 慶一郎 「吉原御免状」 読了。 
長い間、池田一朗(本名)で脚本家を生業にしてきた氏が、
60歳を過ぎてから、隆慶一郎と名乗り書いた、処女作がこれ。 所謂伝奇小説。

うん蓄ずっしり、重厚感ある一冊、
吉原始め、ことばやものごとの説明結構細かく書かれている。
ストーリー、展開ざっくり粗削りですが、
話しの筋がストレートに伝わってきて、かえって良かったです。 
作家デビューし5年でこの世を去った、彗星のように消えた隆 慶一郎、
何より発想がすばらしい! 面白かったです。

キーワードは、
吉原、天子、神君御免状、道々の輩、傀儡子、公界、
後水尾天皇、柳生,裏柳生、家康、影武者、宮本武蔵 等等、
吉原御免状とは、、、さてさて、それは読んでのお楽しみです。

話しは吉原界隈から離れる事多々なのですが、一応。
吉原周辺の図 -20180408(日) 新吉原見取図 -20180408(日)

読了 「藤沢周平と山本周五郎」 -20180331(土)

藤沢周平と山本周五郎 -20180331(土)

私はもっぱら時代小説専読、好きな作家の名前がならんでるので読んでみました、
タイトル見た通り、佐高信と高橋敏夫の対談本です。

内容はと云うと藤沢周平と山本周五郎のことあらら二割程度~(笑) 時代小説作家二人の持ち味魅力を追いながら、90年代に亡くなった時代小説作家、隆慶一郎、池波正太郎、松本清張、司馬遼太郎、結城昌治、山田風太郎、半村良、笹沢佐保、黒岩重吾、吉村昭ら巨匠たちの考察に、もっと古い歴史,時代小説の川上、さらにこれからを担う時代小説作家たちに話しは及んでいる。 藤沢周平と云う場を共有した池波派と周五郎派の対談とも云える。 二人のあれこれ、より知りたくて手にした本でしたが、おかげで、両氏の文壇における位置づけ、時代小説の始まりから今、そして今後に触れることができました。 その道深く探求された二人の評論家が語ることは、一ファンの私が感ずるところ思う処とは異なることもありましたが勉強になりましたし、次手に取りたいものが見えてきました。

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佐高信 …1945(S20)山形県生まれ。高校教師,編集長、のち評論家 
著書「司馬遼太郎と藤沢周平」1999年、英雄物語ではない、歴史小説の醍醐味

高橋敏夫 …1952(S27)香川県生まれ。早稲田大学教授、文芸評論家
著書「藤沢周平‐負を生きる物語」「藤沢周平」「周五郎流」「理由なき殺人の物語」

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□ 山本周五郎 1903(M36.6/22)生、1967(S42.2/14)没 享年63歳
藤沢周平が生まれた時、山本周五郎24才。
 戦前は所謂凛とした武家ものを書くも、戦後は一変市井ものに変ってゆく。
「柳橋物語」(S21)…市井ものの始まり。
人の満足や喜びよりも失意や絶望のうちにこそ人間の人間らしさを感じた周五郎。

□ 藤沢周平 1927(S2.12/26)生、1997(H9.1/26)没 享年69歳
 山本周五郎が亡くなった時、藤沢周平39才。
 周五郎にあった「道」が、藤沢周平では「生き方、スタイル」と云う生活スタイルに。

・故郷を語らない山本周五郎、故郷を語る藤沢周平
 周五郎最期のことばは「山へ」だったのだが、下層を生きる人間にとって故郷の自然は、地主のものであり地農のものであり、名士のものであって、すべて他人のもの、自分のものではない、という思い考えが、子供の頃貧しかった周五郎にあった。生活に汲々としてる者には「季節のない街」しかない。
・ただ人人ひとを描く周五郎、人を自然とからめ描く藤沢周平

・そもそも歴史小説や時代小説がどこから始まるのかにも定説がない?
 純文学における二葉亭四迷の「浮雲」の位置に何が来るのかはっきりしない。
・司馬遼太郎が好きな男性に、松本清張が好きな女性という構図
・バブル崩壊、混沌とした先の読めない90年代以降は働くスタイルの多様化。場所、時間も
 経営者、労働者…正社員、パート、派遣、フリーター、自営業者、と、働く立ち位置さまざま
・時代小説を読むのは現代からの逃避なのか、という疑問。
 水戸黄門、遠山の金さん観るよな、安心、癒し、ほっとしたいという気持ちからなのか?、、、否、
 限られた時代という箱の中の話しながら、そこには今も昔も変わらない人の心の中に住むものが
 あるように思う。現代小説を読んだところで、それは自分の現実ではない。やはり!現実逃避。


以下、本書に挙がった作家,評論家半分ほどあらあら抜粋、ほか個人的なメモ
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□ 山岡荘八の大ベストセラー「徳川家康」、、、江戸城築城の際四国などからきた多くの人足を、工事が終わった時、城内の秘密がもれると皆殺しにしたわけですが、本田宗一郎は「人間許せることと許せないことがある」と何度も著者に質問を投げかけたが肝心の答えは得られなかったという。
□ 池波正太郎「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」 ・・・悪党もの。間の文体がすばらしい、、、「その夜。」なんてのが。
□ 隆慶一郎 デビュー作84年60歳?の◎「吉原御免状」。彗星の様に消えてしまった作家
闇の領域からものを見るおもしろさ、それも明るく軽く楽しく。89年没。
□ 中里介山1885(M18)生 ◎「大菩薩峠」…時代小説。大正2年から昭和16年に描かれた未完の巨編。全20巻一冊500頁、1万頁の超長篇。時代小説の始まり作品。アンチヒーロー、机龍之介。 読みたいが今の暮らしじゃ半年かかるぜヨ~(一一")
□ 司馬遼太郎1923(T12)‐1996(H8)72歳没 「竜馬がゆく」「坂の上の雲」「街道をゆく」「高田屋嘉兵衛」。初期の「梟の城」これは隆慶一郎が脚本を書いている。作風はうねり、クライマックスを巧みに表現する華麗なる天才。
□ 吉村昭 緊張感を静かに湛えた無数のクライマックスからなるが、司馬遼太郎のように謳いあげない。総じて地味。司馬とは相反する境地、作風が魅力的。読者を静かに揺さぶる。「漂流」「戦艦武蔵」「仮釈放」「桜田門外ノ変」「天狗争乱」「大黒屋光太夫」「ポーツマスの旗」「大本営が震えた日」
□ 笹沢佐保「見かえり峠の落日」。71年「ご赦免花は散った」に始まる紋次郎シリーズ登場。28年間、全113篇。
□ 松本清張 92没 「無宿人別帳」
・・・清張的女性作家に、高村薫、桐野夏生
□ 結城昌治96没 ◎「斬に処す」…赤報隊。「軍旗はためく下に」…闇を描いたこの作品で70年直木賞受賞。
□ 長谷川伸 時代小説創設期の巨匠。1929年に初めて「股旅」ということばを使った。池波正太郎が早くから師事していた作家。「相楽総三とその同士」は結城昌治の「斬に処す」と似てるらしい。股旅ものとして「一本刀土俵入」「瞼の母」がある。
□ 山田風太郎2001没。忍法帖シリーズ。明治伝奇小説。「魔群の通過」
□ 半村良2002没。得意は伝奇小説~人情もの
□ 黒岩重吉2003没  □ 村上元三2006没  □ 城山三郎S2生、2007没
□ 東郷隆90年刊行「人造記」  □ 横山秀夫「」「第三の時効」「半落ち」

□ 井上光晴「地の群れ」
□ 船戸与一「蝦夷地別件」 …時代小説にあって国境を超える試み。
  「砂のクロニクル」(これは現代もの)
□ 塩見鮮一郎「浅草弾左衛門」「車善七」  □ 梁石日

□ 久野収  □ 鶴見俊輔  □ 石川啄木、1910年評論「時代閉鎖の現状」
□ 堀田善衛(富山県高岡市出身)「大菩薩峠とその周辺」1959発表。机龍之介天皇説?

□ 江馬修1889(M22)生 ◎「山の民」…歴史小説。
  昭和13年から15年に描かれた。作られた面白さを拒絶してるかのような名作。

□ 島崎藤村1872(M5)生「夜明け前」
□ 吉川英治「宮本武蔵」「新書太閤記」「新・平家物語」「三国志」  □ 五味康祐
□ 柴田錬三郎  □ 山田太一  □ 田原総一朗  □ 大佛次郞

□ 縄田一男 …あらゆるものを読んで且つ周五郎や藤沢周平を愛する研究家評論家

□ 山本一力  □ 乙川優三郎  □ 網淵謙錠  □ 井上ひさし  □ 京極夏彦
□ 安部龍太郎  □ 富樫倫太郎「蟻地獄」「女郎蜘蛛」  □ 荒山徹
□ 宮部みゆき  □ 諸田玲子  □ 宇江佐真理  □ 松井今朝子
□ 町田康「くっすん大黒」「パンク侍、斬られて候」

読了 「おたふく物語」 – 20180320(火)

おたふく物語 -20180320(火)

山本周五郎 「おたふく物語」 読了。

周五郎は藤沢周平と同じで生涯に奥さんが二人。
彼は先妻が亡くなった翌年、昭和二十一年四十二歳の時に、
自宅の筋向いに住んでいた女性(三十八歳)と再婚するのですが、
下町育ちでちゃきちゃきの女性を主人公にしたこの作品は、
その後添いきんさんをモデルに描かれたと云われています。

貧乏など怖くない、と云っては箪笥の着物質に入れ米や酒に変え支えつづけたそうです。
そのきんさん、自分の事を 「のろまでおたふく」 と称し、
苦労を苦労とも思わず明るいが、時に素っ頓狂な事を云う人だったらしい。
しかしどうしてどうして、なかなか人目を引く美人で、江戸っ子中の江戸っ子、 
話し口調もテンポ良く、気持ちがいいほど小気味良い人だったらしい。

きんさん -20180320(火)

再婚した時はすでに作家としての地位をある程度確立してはいましたが、
こういう後添いのおかげで、周五郎は良い作品を書き続けられたのではないでしょうか。
曲軒と云われた周五郎、きんが大好きだったわけ。 なので読んでみました。  
関係ないですが、山本周五郎最期のことばは 「山へ」 であります。

ほか 「凍てのあと」 「おさん」


さてさて、三寒四温なころ
今日は寒のほう、さぶい(一一") とっとと布団かぶって寝ちまえばいいのに、
ストーブつけて焼酎ロック、、、人間などというものは煩悩に生きる贅沢もんです。
今日は寒い -20180320(火)


読了 「殺しの掟」 – 20180314(水)

殺しの掟 -20180314(水)

池波正太郎 「殺しの掟」 読了。 表題含め九つの話しからなる。

「おっ母、すまねぇ」 「夜狐」 「顔」 「梅雨の湯豆腐」 「強請」 
「殺しの掟」 「恋文」 「夢の茶屋」 「不忍池暮色」

時代小説というと、
「、、ねばならぬのだが」 とか 「、、などと思い悩んでみたものの」 とか云った、
にわるさん的表現多いですが、さっすが池波正太郎、すっきり!してます。 読み易いし。
タイトルどれもシャレてりゃ、氏らしく食べ物がちらほら登場するのもいい。

また九つのうち六つの話しは昭和45,6年に書かれています。 
「鬼平犯科帳」 で一躍人気になったあとに書かれ、このあと 「剣客商売」
そして 「仕掛人藤枝梅安」 が世に出てゆきます。
そんな池波正太郎イケイケな時代に入る直前に書かれたことが、
この作品の、力強さ、骨太さ、完成度の高さ確かに裏づけている、そう思います。

粋で切れの良い話し運びに内容の乾いた感じ、どれも良かったです。

読了 「おさん」 – 20180228(水)

おさん - 2018028

山本周五郎 「おさん」 読了。 表題作含めた十の話し。

藤沢周平がどちらかと云うと静かな情景描写上手いとすれば、
この周五郎、人の心の描写がやはりすばらしい。 時に静かに時に激しく。
どれもなかなか深く、良かったですが、
取分けお気に入りは、「並木河岸」 「おさん」 「饒舌り過ぎる」


以下あらすじやら感想やら
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■「青竹」…「ますらを」昭和十七年九月号
  戦で手柄を立てても褒美を求めない、井伊藩士余吾源七郎の、一徹な武士の生き方を描いている。 発表年を見るに当時は戦時下。 手柄を立てて一旗揚げようと云う風潮に対するレジスタンス、世相がら揶揄とまでは云わないが皮肉ウィットなものを感じました。

■「夕霧の中」…「キング」昭和二十七年二月号
  仕返しに江戸に帰ってきた男が、町方に後をつけられる。 暮れ方の墓地に逃げ込み適当な墓の前にぬかづくのだが、墓参に来た母親と妙なことになる話し。

■「みずぐるま」…「面白倶楽部」昭和二十九年五月号
  旅芸人薙刀使いの少女若尾がふとしたことから武家の重職の養女となり、健気に明るく成長してゆくという話し。

■「葦は見ていた」…「面白倶楽部」昭和二十九年九月号
  側用人からさらに次期国老就任を目の前に辞職した藤吉計之介だが、若い頃は商売女に現を抜かす遊び人だった。葦の河原で古い蒔絵の文筥をを拾い中の手紙を読むが、、、

■「夜の辛夷」…「週刊朝日別冊」昭和三十年四月
  凶状持ちが来れば岡っ引きに教え謝礼をもらう、二十四になる岡場所の子持ちのお滝。 そんな暮らしの女になじみができた。 さてどうなる。

■「並木河岸」…「オール讀物」昭和三十一年八月号
  深川平野町に帳場を持つ船大工の鉄次。 二十四でおていと所帯を持って七年だが三度の流産、子に恵まれない。 フリで入った飲み屋で(鉄次には憶えはないが)幼なじみだという女お梶と出会う。 急速に親しくなり泊りがけの遠出に出かけることに。おていには仕事仲間と行くと云うが、おていはわたしも一緒にゆくと云う。 粋でハッピーエンド心温まる作品。

■「その木戸を通って」…「オール讀物」昭和三十四年五月号
  許婚がある男の家に年頃の女がこの頃いるという、、、確かにいた。 決まっていた話は破談。 誰からも稀に好かれるほどの良い娘だったのでついに一緒になり子までもうけるが、ある日女はその木戸を通っていなくなる。 ファンタジックワールド、那覇市、じゃなくて話し(おやぢギャグ失礼)。

■「おさん」…「オール讀物」昭和三十六年二月号
  山本リンダじゃないが「火がついたらもうどーにも止まらない」と云う持って生まれた体持つ女の性に左右される男たち。 参太とおさん。 おふさ、そして伊三。 次々に男を換えるおさんはその性ゆえに男たちを破滅させ、最後は自分も殺される。どろどろしたもの描いてるわりに、表現構成がとてもすっきりしてて、読む者を飽きさせない。 読み易い名文章であるとも思いました。

■「偸盗」…「オール讀物」昭和三十六年六月号
  偸盗、、、耳になじまないことば、要は盗っ人の話し。 極悪非道を自負する盗っ人鬼鮫が、多くの人々から取り上げる貴族も自分と同類な偸盗だと、貴族を狙い、ついに美姫の誘拐に成功するが、あららこれがとんだ娘で困ってしまうという話し。 鬼鮫結構ユーモラス。 そして悪い奴ほど良く笑う社会構造も描き出してるのかな、そう思いました。

■「饒舌り過ぎる」…「オール讀物」昭和三十七年二月号
  子供の時からの親友、小野十太夫と土田正三郎。大きくなっても離れられない。 好きになる女が一緒なら女もどちらも好きになってしまうという複雑さ(笑) エンドレススパイラル~。 それぞれに所帯をもつが。 そして一人が亡くなる。 文章表現すっきりしてるし、「饒舌り過ぎる」 という題名が逆説的であり、内容をより深くしているように思いました。

久々に解放感の中で - 20180209(金)

いつまでも寒いですが、雪かきからRelease!! からの、週末三連休前夜, 
自分の時間が取れる、持てるという事はありがたいことだと思います。
ヤでも身も心もゆるみます。 こんな夜は久しぶりに好きなジプシー・キングス

まずは、知ってる人は知っている知らない人は知らない
♪インスピレイション (Inspiration)
池波正太郎,鬼平犯科帳のエンディングテーマから~♪

曲と江戸庶民情緒のマッチング、なかなかステキです。

つづいて ♪ボラーレ (Volare)

控えめで大人な情熱感,たまらない。 楽しむ人々の様子もいい。

そして ♪マイ・ウェイ (A Mi Manera)

ものがなしく凛とした感じ、
ジプシー・キングスだからか、本家より好きです。  やはり名曲ですね。

人と云うものは、
ひとときでもこうして夢を見ていたい、夢の中に身をおきたい、
そう思う、またそうでなければ生きてゆけない生きものように思います。
生きてることそのこと自体が 「夢」 なのかもしれない、とも。

あすは久しぶりに目覚ましかけず、だっらだら!に寝てたい。

読了 「蜩ノ記」 – 20180202(金)

蜩ノ記 - 20180202(金)

葉室麟 「蜩ノ記」 読了。
今をトキメク売れっ子時代小説家の一人葉室麟氏が、
昨年末に突然亡くなられましたので、追悼。

命のタイムリミットに向け一日一日を過ごす一人の武士とその周囲の者たち、
武士として、父として、夫として、どこまでも切なく、そしてどこまでも凛としている。
ストーリーの分かり易さに、葉室麟という作家の癖のない表現のシンプルさが際立った一冊、
それゆえに、物語全体にとても透明感がありましたし、物静かな情景描写もステキでした。
限られし命の物語ながら、爽やかな感が残りました。 ご冥福をお祈りいたします。

※参考
葉室麟氏が66才で亡くなられたことは一般的な寿命からするとかなりの短命ですが、
藤沢周平69才、池波正太郎67才、山本周五郎63才、と多くの時代小説作家は短命です。
24時間365日、自らで自らを律し、創作活動などと云うものに身を置きそれを生業とする、
職業柄、たいへんなストレスがかかるものと思われます。 合掌。


読了 「羆嵐」 – 20180117(水)

羆嵐 - 20180117(水)

吉村昭 「羆嵐」 読了。 
実際に起きた三毛別羆事件をもとに書かれた惨劇。

大自然の中にあっては人はただのエサに過ぎない、 
村の者、消防団、警察、そして鉄砲持ちがどれだけ集まってもただのエサの集団に過ぎない。

日頃飲んだくれ者荒くれ者と周囲から煙たがられ敬遠されている、
老練なクマ撃ちが最後一人で討ち倒すのですが、
討ち獲る際の、繊細で美しいとさえも言える姿、挙動、
人にはそれぞれの立ち位置、居場所、と云うものがあることを改めて感じました。

雪の真冬に読んだのは適期でした。
参 考

しばらく、血生臭いもの続いたので、少しふにゃっとした明るいもの読みたくなってきました。